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【合格体験記】出世街道から外れた僕が、独学で日商簿記1級に合格してマネージャーになるまで

四十代、独身、上場企業の経理で平社員。同期は課長や部長へ進み、僕は評価欄の「安定しているね」にとどまっていました。悪くはない。でも、良くもならない。コンビニの白い灯りの下で弁当を手にしたまま、未来が透明になる夜が続いていました。

合格軌跡

  • 合格資格:日商簿記1級
  • 合格者:40代男性
  • ご職業:上場企業経理
  • 学習期間:400時間

教材

目次

気づきの瞬間

若手が会計士短答に合格したという社内メールを見た日、祝福しながら胸の奥に小さな嫉妬が灯りました。悔しいなら動けばいい。机を片づけ、参考書を一冊だけ残し、翌朝の一時間を未来への投資に変えると決めました。

学習設計

残業や月次決算の波で通学は難しいと判断し、独学に絞りました。朝のコーヒーとともに仕訳の練習、出社前に論点読み、就寝前に短い復習。量は控えめでも毎日続ける。三週間ほどで、収益認識から工事進行、引当金、税効果、減損へと論点が一本の線でつながり、日中の業務で触れる処理の意味が理論と噛み合い始めました。

独学の壁を越えるルール

独学の難所は、誰も答え合わせをしてくれないこと。ある日は解けて、別の日は崩れる。揺らぎを相性のせいにしないため、正解でも根拠を言語化できなければ不合格とみなすルールを作りました。仕訳は財務諸表のどこに効くかまで追跡し、理論は「定義・趣旨・要件・結論」を口で言えるようになってから書き始める。誤答の記録は原因と次の行動を一行に絞り、再現性だけを残しました。

仕事と学びの接続

朝に掴んだ骨格を日中の会議で使いました。決算整理や注記の場面で「なぜこの表示か」を自分の言葉で説明できる場面が増えると、周囲の視線が変わります。机上の知識が、一次情報から判断する力に変換されていく手応えがありました。

試験当日の戦い方

難問に出会っても配点は皆同じと自分に言い聞かせ、頻出の骨格で取り切る方針に徹しました。理論で崩さず、連結で貯金を作り、原価計算は差異の原因を言葉で取りにいく。見直しは根拠に黒丸を打つ短いチェックに限定し、深追いせず答案を閉じました。合格発表で番号を見つけたとき、歓喜より先に静かな安堵が降りました。長い霧が音もなく晴れていく感覚でした。

合格後に起きた変化

数週間後、子会社決算の取りまとめと監査法人対応を任されました。会議前に論点整理メモを配ると、若手が質問を持って席に来る。メールの宛先に僕の名前が並び、クロージングで判断を求められる場面が増えました。気づけば「頼る側」から「頼られる側」へ立ち位置が変わっていました。

昇進の理由

半期面談でマネージャー職の内示。部長は「資格そのものより、勉強過程で身につけた説明できる力を評価した」と言いました。独学の毎日は、知識を積むだけでなく、他者に納得してもらう論理と順序を鍛える訓練だったのだと思います。肩書が変わったのは、その副産物でした。

独学で得た本質

誰も背中を押してくれない時間に、自分で自分を動かす習慣。テキストと財務諸表を往復し、処理の理由を問い続ける癖。これらは肩書より長く残る財産です。四十代でも遅くないと、自分で証明できたことが何よりの収穫でした。

これから

マネージャーになった今、数字と人の両方に責任を持つ段階に入りました。朝の一時間は続けます。夜は奪われやすいけれど、朝は自分で守れるからです。正解の上に「なぜ」を一段重ね、答えを説明できる力をチームの標準にするつもりです。

終わりに

出世街道から外れたと自分でラベルを貼っていた時期がありました。けれど、道は一本ではない。地図を広げ直し、歩幅を決め、朝の静けさの中で最初の一歩を踏み出す。日商簿記1級は、その一歩に火をつける火種でした。合格通知は肩書だけでなく、時間の使い方と言葉の重さを変えてくれた。静かに、粘り強く、そして誠実に。かつての自分に届く声で、これからの仕事を続けていきます。

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